事業の概要

事業のテーマ

学校評価の充実等を目的とした資格枠組の共有化・職業分野別展開とその有用性の検証

事業の目的

本事業は、「資格枠組のレベル定義」を頂点としたコンピテンシー体系を、産業界、専門職高等教育機関、高等学校等と共有し、各職業分野で求められている学修成果の測定に用いる仕組みについて研究することを目的としている。

このとき、いくつかの職業分野を事例として、人材ニーズをもつ産業界と人材供給源となる専門学校間において先行的に活用し、将来的には学修成果の測定のみならず、就職した後の職業能力の判定などに用いることにより、資格枠組の有用性を検証する。

実施の取組概要

1年目の事業では、その第一段階として、専修学校(養成施設等)と産業界(国家試験合格者を雇用する業界等)、高等学校との間で活用されていくことを目指し、将来的に、職業分野に依存することなくその活用を広げていくスキームの構築を目指した。
職業分野としては、「美容」、「ゲーム・CG」、「動物」、「土木・建築」の4分野を対象とした。

2年目の事業では、1年目のスキームの国際通用性の検証を目的とした海外展開を進めるとともに、学校(学科)単位の学修成果評価の方法を検討した。

本年度(3年目)の事業では、職業分野ごとに代表校を選定し、学校(学科)ごとの「学修成果評価」を試行し、産業界、高等学校等のステークホルダーによるアセスメントを実施して、3年間の事業成果とその発展可能性について検証する。
このとき、特に、専門学校第三者評価(当機構が実施する専門学校の第三者評価制度)等を意識した学校評価の充実につながる視点を重視し、資格枠組のレベル定義を適用した分野共通の枠組と、学修成果指標を適用した分野独自の枠組を用いた実証実験を実施し、評価機関として相応しい結論付けを目指す。
また、本事業の成果を普及し、学校評価に活かすことを目的とした普及・啓発セミナーを、東京・大阪・福岡にて実施する。

コンピテンシー事業の全体計画

事業内容の説明

事業実施の成果目標

学修成果の可視化に関する流れ

学修成果をシステマティックに評価して公開する機運は、大学等における認証評価の開始以降、特に高まってきたように思われる。

平成16年度に始まった認証評価では、たとえば、大学評価・学位授与機構の評価基準の一つとして「教育成果」が設定されていたが、学修者からの視点を重視する流れにしたがって、平成23年度からの2巡目では「学修成果」と改められた。

平成26年度から実施された文部科学省の「大学教育再生加速プログラム(AP:Acceleration Program for University Education Rebuilding)」では、「学修成果の可視化」をテーマとした事業が多くを占めていた。

このような流れを受け、多くの高等教育機関では、ルーブリックやカリキュラムマップなどの枠組を作成し、学修成果をあげるための工夫やその可視化が試みられている。

しかしながら、それらの試みの多くは、学修成果を測定する枠組の構築に重きが置かれており、学修成果を測る基準、すなわち、枠組の中身の議論が進んでいないように思われる。
ルーブリックの形は整っているものの、その中身は成績評価基準をそのまま転写しただけで、しかもその内容は学校の中でしか通用せず、学生の将来のキャリア形成の基礎として位置付けるような視点に乏しいものも多い。

資格枠組のレベル定義(レベルディスクリプター)の策定

今、高等教育機関に求められている学修成果の枠組は、グローバル化が進み、人生100年時代を迎えようとしている現代社会において、生涯に渡って参照可能で、かつ、国際通用性のあるレベルディスクリプターである。

わが国には、諸外国に存在する「国家資格枠組(NQF、National Qualifications Framework)」が存在しない。
職業教育の観点から見ると、多くの専門学校生が取得目標とする国家試験は数多く存在し、中核的人材の輩出に少なからず貢献している。
しかし、これらは各省庁が独立に設置・運営しているものがほとんどであり、国家的な観点からレベルの統一を図り、さらに、人材の移動可能性を促進するような発想はないに等しい。

そのような中で、当機構では、平成30年度および令和元年度の文部科学省委託事業の中で、わが国において使用されることを想定し、かつ、国際通用性のある「資格枠組のレベル定義(レベルディスクリプター)」およびその概要を策定した。
本事業は、この事業成果を継承し、学校評価の充実等に結び付けることを目的とした事業として位置付けられる。