事業成果報告書

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ポートレートシステムの目的と課題分析

ポートレートシステム開発の目的

本事業の目的

専修学校職業実践専門課程制度の発足およびその後のフォローアップにより、専修学校の情報公開は徐々に進みつつある。
しかし、この制度では公開の「様式」が定められているものの、情報の管理・提供方法が学校に任されているため、ステークホルダーから見た利便性が高いとはいえない。

本事業の第一の目的は、大学等において一般的になりつつある「大学ポートレートシステム」なども参照しながら、利用側・学校側双方にとって有用で、職業実践専門課程制度の趣旨に叶った情報システムのあり方を研究し、開発することである。

本事業の背景

現状では、職業実践専門課程に求められている情報公開・提供の「様式」は表計算ソフトのファイルであるため、一般市民、高校生、保護者、行政機関などの利用者から見た場合、次のような問題が生じている。

  1. ホームページに公開する場所は学校の判断に委ねられているため、検索が容易でない。
  2. 公開される情報が、年度ごと・課程ごとに一つのファイル形式であるため、課程間比較、時系列比較がしにくい。
  3. ほとんどの場合公開される情報がPDF形式であるため、数値としての活用がしにくい。
  4. 様式は決まっているが、自由度の高い項目も多く、学校間の統一感に乏しい。

一方、大学の場合、認証評価制度の開始をきっかけに、大学等の情報公開に対する姿勢が変化し、ホームページ等の上に公開される情報の量は飛躍的に増加した。
その後、情報公開の標準化を求める各方面からの声に応え、2014年10月には「大学ポートレート」を通じた情報公開の仕組みがスタートした。

しかし、この仕組みは、「公開項目の自由度が高い」「参加に義務がないため、特に私立大学では普及していない」「大学にとってホームページを編集することと二重手間になっている」等の諸問題があり、普及しているとはいえない。

このような現状の下、わが国が2017年12月に批准した「高等教育の資格の認証に関するアジア太平洋地域規約(東京規約)」に基づき、2019年9月に「高等教育資格承認情報センター(NIC)」がスタートし、合わせて、わが国すべての高等教育機関を検索することができる情報システム(以下「NICシステム 」)もスタートしたことから、高等教育機関に関する標準的な情報公開システムに対するニーズが飛躍的に高まっている。

この点、職業実践専門課程の基本情報の公開制度は、文部科学省によって公開項目が標準的に設定されている点で、利用者から見れば、大学よりむしろ優れた制度となっており、これをデータベースシステム化することは、当を得た取組であるといえる。

本事業の取組概要

本事業は、令和元年度において作成した「職業実践専門課程ポートレートシステム」(以下「ポートレート」)のプロトタイプをベースに、情報公開ニーズに応えるための機能を付加し、専門学校に関わるステークホルダーの利便性を向上させるためのものである。
本事業ではその趣旨にかなうものとして次のような取組を進める。

横断分析を可能とする機能設計の強化

これまでの開発において、ある学科の時系列比較機能を開発・実装することは達成した。
本年度は、ある学科と他のある学科を比較することを可能とする仕様を追加し、複数の学科の横断的な分析を行えるようにした。

ポートレートデータの入力促進

3年目の開発終了後にスムーズな本番移行を可能とするために、主な学校の公開済みポートレートデータを入力した。
このことにより、ポートレートデータ入力の役立ちを実感し、同データの入力を促進することが期待される。
今年度は主として、2020年度までのデータ入力を行った。

普及のための動画コンテンツ開発

ユーザ(専門学校)自らの入力によるポートレートシステムの普及には、ポートレートシステムによるポートレートデータの提出を文部科学省が認めること、それに加えて、ユーザ自身によるデータ入力の促進が欠かせない。
前者については、文部科学省が決定することで、ここでその保証をすることはできないが、後者については、システム開発者側として最大限の努力をしなければならない。
そのような観点から、ポートレートシステムの使い方を説明する動画コンテンツを開発に取り組んだ。

職実ポートレートセンター発足に向けた活動

令和5年度から、当機構を中心とした「職実ポートレートセンター」をオープンし、現状の職実ポートレートシステムを中心とした運用を行う予定である。
詳細は、専修学校関係者を中心とした「職実ポートレート運営会議」によって決まるスキームになっているが、それに向けての諸活動を行う必要がある。

ポートレート事業実施の年次計画

本事業の最終的な姿は次図のとおりシンプルなもので、この姿を目指して3年間の取組を続け、年度ごとに成果物を順次アウトプットしていく。

ポートレート3年後の姿

ポートレートシステムに求められる要件の概要

ポートレートシステムでは、数千にも上る課程の情報を管理する必要があるため、それらを一元的・体系的に管理するデータベースシステムとしての開発が必須であり、かつ、一般利用者のアクセシビリティの観点からWebによるアクセスを可能とする仕組みが必要となる。

このシステムの開発後において想定される利用者側のメリットとしては、次のようなものが挙げられる。

  1. ポータルサイトからすべての学校のデータを参照できる。
  2. 参照ニーズに応じた検索機能を利用できる。
  3. 学校間、分野間の比較や同じ学校(課程)の時系列比較ができる。
  4. エクスポート機能等を活用した数値データの加工が可能となる。

また、情報公開・提供の主体である学校側のメリットとして、初回のデータ入力は情報量も多く、作業は容易とはいえないことが想定されるが、ひとたびデータを入力すれば、年度ごとの更新は過年度のデータを参照・コピーすることができるので、入力・編集作業は大幅に簡素化できることが挙げられる。

ポートレートシステムに求められる要件

ポートレートシステムの実績

ポートレートシステムは、平成30年度の要件定義開始以降令和3年度までに、職業実践専門課程を有する学校向けの機能としての様式Excelからポートレートシステムにデータを登録する機能、一般の方向けに情報公開を行う検索機能ともに、ほぼ完成した状態になっている。

平成30年度
  • ポートレートシステムの暫定要件定義
  • プロトタイプの開発
  • プロトタイプの試用に基づき要件の精査
令和元年度
  • PDF文書のアップロード機能追加
  • CSVデータエクスポート機能追加
令和2年度
  • NICシステムとのリンク機能追加
  • 多言語対応(英訳および中訳【簡体字、繁体字】)
  • 時系列比較機能追加
令和3年度
  • ポートレートデータの入力促進
  • 普及のための動画コンテンツ開発
  • 学科比較機能追加

ポートレートシステムの課題

統一されていない様式入力

Excel形式の様式データの各項目に対する入力方法が全ての学科で統一されておらず、ポートレートシステムへの登録の際に人間の手による補正が必要なケースが多い。
表現や用語が統一されていないことは、外部公開する際に閲覧する側が混乱する要因にもなり、データ登録時に様式の意図と異なる表現になってしまう原因、効率的な登録ができない原因になってしまう。

様式の公開データ形式

各学科が文科省に対して様式データを提出する際はExcel形式のデータとなっており、比較的ポートレートシステムへの転記が容易であるが、各学科がWebサイト等で公開している様式データの大半はPDF形式であり、文字情報が埋め込まれていないものも多い。
このため、コピー&ペーストによる入力が困難なケースが多発し、ポートレートシステムへの登録時には、様式データと同じ内容を人間が手入力することになり、入力ミスを誘発する原因、入力が効率化できない原因となっている。

多数のデータに分割登録する必要のあるデータの存在

1学科の様式データの中に、多数のデータに分割する必要のあるデータが存在し、ポートレートシステムへの登録の際には非常に大きな人間の作業が発生する。
例を挙げると、

  • 学科科目年度(1学科で50を超える科目の登録が必要なケースがある)
  • 教育課程編成委員(1学科で10を超える委員の登録が必要なケースがある)
  • 学校関係者評価委員(1学科で10を超える委員の登録が必要なケースがある)

のようなものがある。

ポートレートシステムの課題解決案

統一されていない様式入力

Excel形式の様式データの各項目に対する入力方法を標準化し、各学科から提出されるExcel形式の様式データを標準形式に合わせる協力依頼を各学科に対して行うことが望ましいが、将来的な対応にはなっても、既存のExcel形式の様式データの修正を各学科に依頼することは現実的ではない。
当面は、Excel形式の様式データの入力方法を標準化し、ポートレートシステムに登録する際に各学科の提出したExcel形式の様式データを標準化したものに手作業で修正する必要がある。

様式の公開データ形式

各学科が文科省に対してExcel形式の様式データを提出する際に、各学科の担当者が直接的にポートレートシステムに登録することが本来の運用形態であると思われるものの、各学科の担当者の負担が大きくなることや、標準化したデータの入力様式を全ての学科の担当者に周知することは現実的でないことから、当面の現実的な対応としてExcel形式の様式データを専門職高等教育質保証機構が入手し、ポートレートシステムへの登録は専門職高等教育質保証機構で実施する方法がある。
文科省への様式提出はExcel形式のデータとなっているものの、各学科が公開している様式はPDFが大半であることから、各学科が提出したExcel形式のデータを専門職高等教育質保証機構が入手できる仕組みの構築が将来的には望まれるものの、今年度事業については専門職高等教育質保証機構の会員校に対して個別に依頼してExcel形式の様式データを提供していただくことで検証を行うこととする。

多数のデータに分割登録する必要のあるデータの存在

1学科の様式データの中に、多数のデータに分割する必要のあるデータが存在する場合に、ポートレートシステムへのデータ登録を効率化する方法として、次のような方法が考えられる。

  • 様式Excelデータからポートレートシステムに登録するデータをCSVとして抽出し、CSVデータを利用して一括登録
  • 様式Excelデータからポートレートシステムに自動的に登録するRPAを利用

CSVデータを利用して一括登録する場合と、RPAを利用して自動的に登録する場合の比較を表に示す。
比較表の評価結果より、今年度事業ではポートレートシステムへのデータ登録作業の効率化にRPAを活用した場合の検証を行うこととする。

CSVとRPAの比較

職実ポートレートセンターの稼働を見据えたRPA運用実験

職実ポートレートセンターの稼働を見据えたRPA運用実験

文部科学省提供資料

RPAの開発

学科科目年度登録RPA処理の目的

1つの学科あたり多い場合には50を超える履修科目数があり、学科により科目数は大きく変動するため、登録には大きなマンパワーを要する。
登録する科目数は多いが、科目ごとの処理は比較的単純化できるため、RPA向きの処理であると判断できる。
RPAにより処理が高速化できれば、大きな業務処理改善が見込める。

対象とする様式

2021年度に更新された、「別紙様式1-1~7(Excel:138KB)」を対象とする。
ダウンロードURL
「職業実践専門課程」について > 手続き関係

授業科目等の概要

対象登録画面

2022年8月1日時点の、「職業実践専門課程ポートレート」を対象とする。
画面ID :10.50.50.80.20.20
画面名 :職業実践専門課程ポートレート学科科目年度登録
学科科目年度登録画面

職実ポートレートセンターの稼働を見据えたRPA運用実験

Excel修正が多い学科でもRPAでの登録は手作業の3分の1程度であり、Excel修正が少ない学科では5分の1程度であり、効率がよい。
特に手作業では、科目数が多くなると人的疲労は大きく、集中力が続かないこともあり、入力ミスが多くなった。

今回、手作業後のデータチェックと修正は行っていないが、これを行えば手作業の所要時間はさらに大きくなる。
また、正確に登録するという点からもRPAでの登録は効果的である。

手作業とUiPathロボットの1科目登録時間

専門学校に対する意見聴取

意見聴取要領

事業の最終段階で、「職実ポートレートシステム」に対する印象等の意見を聴取するために動画を作成し、2023年1月末に当機構会員校にメールで案内し、意見聴取を試みた。

  • 会員校に回答のご協力を依頼
  • 教育課程編成委員会、学校関係者評価委員会のメンバーにも転送を依頼

※国家試験を控えた学校もあり、回答は長期化を予想

アンケート回答状況(2023年2月5日時点)

アンケート回答01
アンケート回答02
アンケート回答03アンケート回答04

アンケートフリーアンサー(2023年2月5日時点)

  • 普通のシステムですね。
  • システムは問題ないと思います。初めての方が検索する場合の工夫が必要と感じました。それと、様式4の記述内容が学校により、かなり異なるので、文科省より指導等が必要かと感じました。ただ、学校により協力的であるかどうかで統一は難しいですかね?
  • 学校検索条件設定画面から、特定の条件を満たす学校を検索したいのですが、現在のシステムでは出来ない仕様となっており、「学校検索結果一覧から詳細を表示する学校を選択してください。」というエラーメッセージが返ってきます。データベース本来の目的として不完全なのでは?と思われます。また、学科比較がリンクはあるものの動作していません。
  • 解説のYOUTUBEは一般の方がどこでどのように試聴できるのでしょうか。解説を見ずに検索をする場合は使いづらいと感じました。
    慣れるまで時間がかかりそうだと感じた。
  • グラフ化が入ると視覚的にデータの傾向が比較しやすいと思います。例えば、他校との比較や特定校の年度別推移がわかることにつながると思います。
  • 使用開始までに1時間近く動画を見る必要があり、もう少し直感的に操作できた方が良いと思われました。
  • 年度ごとの膨大なデータを1つのデータベースに蓄積することにすることによって、時系列、横断比較が可能になることは検証を行う上で非常に有用だと感じます。RPAが導入されることを願っています。
  • 情報・比較等の機能はとてもいい。その他、細かい点等要望は出てくるかと思いました。
  • 複数の学校を検索できることは大いに意味があると思います。学校間の緊張感を保つ意味にもつながります。
  • 日常の業務で使用する頻度は低いですが、他校との比較をしたい場合などは便利な機能だと感じました。
  • 学校名で検索する方が多いため画面上部に表記した方がよいと感じた。
  • 高校生にも使いやすいシステムになっているのではないかと感じました。
  • 検索は慣れれば問題なくできると思います。特定の情報の収集、比較に使いやすさを感じます。
  • このシステムが本稼働すれば学校間の比較検討などが飛躍的に容易になると予想されます。是非本稼働を宜しくお願い致します。
  • 是非、実践運用していただきたいです。
  • システムとしてはあると素晴らしいです。ただし、ユーザーが使うにはもう一段階改良をして実装する必要があると感じました。学校長、設置者、代表者検索はほとんどのユーザーが使わず、もっとも使うのが学校検索です。年度もすべての年度から検索ができたほうが良いです。改善を期待しております。

事業実施体制

ポートレート事業 実施委員会名簿

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実施協力校分科会

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