質保証・向上について
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教育の質保証における「質」とは何ですか?
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教育の質保証における「質」とは何ですか?
一般に、「質」は「欠点がないこと」から「卓越性」まで幅広い概念でとらえられます。
製造業における製品の場合、「欠点がない」は、品質特性(大きさ、重さなど)の均一性があること、裏を返せば多様性がないことを意味し、品質管理の手法などを適用することによって品質の保証を図ります。
これに対してサービス業において提供される「サービス」の「質」には、「欠点がないこと」に「顧客が満足する」という概念が加わります。
学校における「教育」は学生を対象としたサービスの提供ですから、そこでは、設置基準や関係法令を満たすという「欠点がない」ことに加え、独自のカリキュラム編成や授業展開など学校運営の面から「学生が満足する」つまり「学修成果をあげる」ことが「質」として求められます。当機構が実施する「専門学校第三者評価」においては、上記のような視点から「質」をとらえ、学生、就職・進学先、保護者、高等学校などの利害関係者にとって満足な教育(不満のない教育)が行われているかどうかを判断します。
まずは第三者の目からそのような判断をし(外部質保証)、その評価プロセスから得られた知見やヒントをもとに学校が主体的に教育の質の維持・向上を図る(内部質保証)、このようなプロセスを繰り返すことによって質保証・向上を実現できるというのが当機構の考え方です。
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学修成果はどのようにとらえたらよいのでしょうか?
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学生が習得すべき学修成果(ラーニング・アウトカムズ)を重視することが、高等教育の国際的な潮流となっています。
当機構が実施する「専門学校第三者評価」でも、この流れを重視し、その基準の中に「基準5 学修成果」を設けています。
この基準は、学校が目的・目標として掲げている学修成果の達成状況を評価するためのもので、「学校が意図している学生が身につける学力、資質・能力や養成しようとする人材像等に関する学修成果があがっているかを評価」します。
このときの具体的な観点、判断基準は、- 単位修得、修了状況
- 資格取得の状況
- 授業評価等、学生からの意見聴取の結果
- 修了後の進路の状況等の実績や成果
- 修了生や就職先等の関係者からの意見
です。
これらの観点を具体的に示すのは、専門学校がこれらの項目を把握・評価することによって学修成果をとらえるべきであるという考え方に基づくものです。
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専門職高等教育質保証機構の「専門学校第三者評価」と、専修学校に対する職業実践専門課程の認定は関係ありますか?
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当機構の第三者評価を受審することと職業実践専門課程の認定は直接関係ありません。
職業実践専門課程の未認定学科を含む学校でも受審できます。
当機構の第三者評価の基準において
「基準3 職業実践専門課程認定要件との適合性」
を定めていますが、同課程に認定されていない学科等については、この基準を適用した評価を行わない代わりに、そのことを第三者評価報告書に明記します。
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学校関係者評価と第三者評価は違うのですか?
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「学校関係者評価」は評価者が学外の者であるという点で「外部評価」ですが、その評価者は学校が選任するので、その意味では「内部評価」の一つと考えられます。
これに対して、「第三者評価」は第三者評価機関が、当該校と利害関係のない第三者を評価者として選任する「外部評価」です。
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最近よく聞く三つのポリシーとは何のことですか?
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「アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)」、「カリキュラム・ポリシー(カリキュラム編成方針)」、「ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与方針)」の三つを言います。
これらのポリシーを矛盾なく明確に定め、そのポリシーに基づく教育活動を実施することの大切さがあらためて認識された結果、学校種を問わず、特に高等教育においてその必要性がうたわれています。
当機構では、次のようなイメージ図を作成し、セミナーや研修の中で、三つのポリシーの明確化を啓発しています。
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最近、「教学マネジメント」という言葉を耳にするのですが…?
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2018(平成30年)年11月26日、中央教育審議会が「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」という答申を示しました。
2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(中教審第211号)
この答申の中で、「大学がその教育目的を達成するために行う管理運営」を「教学マネジメント」として定義し、「教学マネジメントの確立に当たっては,学長のリーダーシップの下で,三つの方針(卒業認定・学位授与の方針[ディプロマ・ポリシー],教育課程編成・実施の方針[カリキュラム・ポリシー],入学者受入れの方針[アドミッション・ポリシー])に基づく体系的で組織的な教育の展開,その成果の点検・評価を行い,教育及び学修の質の向上に向けた不断の改善に取り組むことが必要」とされました。
この答申を受け、教学マネジメント特別委員会が設置され、すでに3回の委員会が開催されています(2019年4月現在)。
この委員会は文科省の中では高等教育局の所轄ですが、2019(平成31)年度の専修学校を担当する総合教育政策局の文科省予算を見ると、「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進」事業の中でも、「新規」としてこの枠が表示されています(18ページ20枚目の右下部分)。専修学校をめぐる質保証・向上に向けた行政の流れを振り返ると、まず、法的根拠を持つ制度として確立されたものとしては
- 自己点検・評価の実施・公開義務化(2007年)
- 職業実践専門課程認定制度の開始(2013年)
が挙げられます。
加えて、強制ではないものの、職業実践専門課程認定校に向けては、次に示す2つの「手引き」が示されています(いずれも、文科省委託事業「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進」事業成果物)。
- 学校評価を活かした専修学校の質保証・向上に向けて~専修学校における学校評価実践の手引き~(平成26年度)
- 情報公開を活かした専修学校の質保証・向上に向けて~専修学校における情報公開実践の手引き~(平成28年度)
これらの流れは、職業実践専門課程としての認定内容の充実を図り、特に、学校評価と情報公開を重視する行政のスタンスを示すものといえます。
以上に加えて、教学マネジメントに関する予算がとられたことは、職業実践専門課程認定校に対しても、この考え方に基づいて、さらに質保証・向上の面で充実策をとっていこうという行政のスタンスであると思われます。教学マネジメントの具体的な内容については、先述の、「教学マネジメント特別委員会」の第3回会議資料、資料3 教学マネジメントについて(案)が参考になります。
この資料を見ると、教学マネジメントが対象とする事項として、次のものがあることがわかります。
〇三つのポリシー
〇学修目標の具体化
〇授業科目・教育課程
〇成績評価
〇学修成果の把握
〇情報公表
〇FD・SD、教学IR(教学マネジメントを支える基盤)結局、これらは職業実践専門課程の認定要件とも重なっており、また、高等教育無償化の機関要件とも重なっています。
前述の流れが、「学校評価」「情報公開」の重視だったことを合わせて考えると、マネジメントの視点も含めた「教育・学修(教学)内容の充実・向上」が一層求められることになり、職業実践専門課程の認定や、昨年度から始まったキャリア形成促進プログラムの認定要件も加味すれば、企業との連携、中でも、教育課程編成委員会の活動の充実がますます求められていくことになるかと思われます。